ハイティンク来日公演その3-プログラムA ― 2015年10月01日
2015年10月1日(木)
ベルナルト・ハイティンク+ロンドン交響楽団@NHKホール
パーセル(スタッキー編曲):メアリー女王のための葬送音楽
ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番(Pf:マレー・ペライア)
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ブラームス/交響曲第1番
予算の都合上、今日の席は最安席。
3階から見下ろすステージが遠いこと遠いこと。
前半はベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番。
昨日までの一連の流れを考えれば、5番ではなく4番が選ばれるのは自然な流れ。
肝心のペライヤの演奏は、お世辞にも名演とは言い難いもの。
第二楽章こそ静寂の官能とも言うべき見事な世界を表現してくれたものの、第一楽章、第三楽章では余りのミスタッチの多さに感情移入ができない。
月曜、水曜とは別人のよう。
流石のペライヤもお疲れなんだろうか。
後半はブラ1。
いや~、驚いた。
奇をてらわず淡々と軽やかで意外なほど若々しい演奏。
86歳でこう言う指揮ができるんだ!
残念なのが座った席。
何分にも3階の最安席なのでステージから遠い。
だから、弦楽器の響きがどうしても減衰し易いためその色艶が失われてしまうことと、弦楽器の響きが弱まってしまう結果として金管や打楽器が強めに聞こえてしまい、ハイティンクが意図したハーモニーが享受できない。
これが、永田音響設計が設計したホールだどかなりマシなんだけど、ここNHKホールや日本放送協会技術研究所(つまりNHK)が音響設計した東京文化会館だと全くダメ。
やっぱりもうちょっと良い席にするべきだったよなぁ。
もう一つ解せないないのが後半の選曲。
モーツァルトの24番、マーラーの4番、ブルックナーの7番と来てブラームスだったら1番では無いような気がする。
2番か3番が妥当だと思うのは自分だけだろうか?
今回は今日でハイティンクとお別れだけど、次回来日も大いに期待できそう。
もしそれが叶うなら、マーラーなら3番、ブルックナーなら8番を是非振って貰いたいなぁ。
ハイティンク先生、宜しくお願い致します。
ブルックナーの上手い指揮者とオケ ― 2015年10月07日
児玉 宏+大阪交響楽団@東京オペラシティ
リスト:交響詩「オルフェウス」
ワーグナー:ファウスト序曲
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ブルックナー:交響曲第9番
前半はリストの交響詩オルフェウスと、ワーグナーのファウスト序曲。
前者がいわゆるアメリカ式配置(+指揮者の前にハープ2台)、後者がいわゆるドイツ式配置。
舞台上手手前が前者ではチェロ、後者ではヴィオラ。
オルフェウスではチェロのソロがあるからアメリカ式にしたのかな?
大阪交響楽団の演奏は、決して雄弁ではないけど真面目で素朴。
後半にも期待が持てます。
さて、後半はメインディッシュのブル9。
結果は…
前半の抑えめの演奏と打って変わって凄まじい大音量!
金管の迫力は時に度が過ぎるほど。こりゃ凄い。
一方、緩徐部は淡々と穏やかに敬虔に。
まさか、これほどブルックナーをブルックナーらしく振ってくれるとは…
大響も、感情に走ることなく、けれども内に熱い情熱を秘めて児玉さんに追従。
今日の席は前から7列目の中央なので、その心地良い緊張感がひしひしと伝わってくる。
敢えて難癖をつけるとしたら、弱音部になると金管、木管の演奏がやや精度が落ち不安定なること。
とは言っても、十分許容範囲内。
これだけブルックナーを真っ当に演奏してくれるとは、全くの想像外。
大変失礼しました。
追記:
今日のコンサートは、文化庁芸術祭主催公演「アジア オーケストラ ウィーク 2015」と冠されたもの。
助成金が出ているのか、S席でも3,100円。
いやぁ~、お得お得。
アルミンクと名フィルのブラームス4番 ― 2015年10月10日
平成27年10月10日(土)
クリスティアン・アルミンク+名古屋フィルハーモニー交響楽団@愛知県芸術劇場
ルクー:弦楽のためのアダージョ
ベルク:ヴァイオリン協奏曲「ある天使の想い出に」
(Vn:アリーナ・イブラギモヴァ)
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ブラームス:交響曲第4番
今日は18:30から名古屋で大学時代の同窓会。
縁もゆかりもない名古屋だけど、とても楽しみ。
のんびりと東京16時過ぎ出発の「のぞみ」に乗って行く予定だったところ、Twitterのフォロワーさんから良いコンサートが名古屋で開催されるとの情報が…
当日券が14:45から発売されるらしいので、急遽予約を変更して12:30に東京駅を出発。
14時過ぎに名古屋駅に到着。
そこから地下鉄東山線に乗り換えて栄駅で下車。
いや~、それにしても驚いた。
久しぶりに栄に来たら、景色が全く変わっている。
何なんだ「オアシス21」って?
凄い規模だなぁ。
15分ほど列に並び、無事B席のチケットをゲット。
開演まで1時間ほど時間があるので、近くの喫茶店で時間をつぶすことに…
本当は一杯やりたかったけど。
16時にコンサートがスタート。
今日の指揮者はアルミンク。
以前、NJPで聴かせてくれたマーラーの9番の指揮ぶりが良かったので、今回も期待してやって来ました。
最初の曲はルクーの弦楽のためのアダージョ。
初めて聴く曲だけどとても親しみ易い。
乱暴な言い方をすると、R.シュトラウスのメタモルフォーゼンを明るくした感じの曲。
名フィルのアンサンブルの精緻さと、アルミンクの細部にまで気を配った指揮に感心しきり。
前半2曲目はベルクのヴァイオリン協奏曲「ある天使の想い出に」。
この曲、今年の7月に郷古廉さんの独奏で聴いたばかり。
重なる時は重なるんだなぁ。
今回のヴァイオリン独奏はアリーナ・イブラギモヴァさん。
いや~、聴きたい聴きたいと思っていた注目のソリスト。
ようやく今日初めて生で聴けるぞ。
お~、なかなか力強い演奏だ。
骨太だけど無骨と言う訳ではなく、どっしりとした音色。
かと思えば、むせび泣くようなか細い繊細さも見事に表現。
ん~、素晴らしい!
後半はブラームスの4番。
ブラームスの4曲ある交響曲の中で、最もディープな名曲。
はたしてアルミンクはどんな指揮をしてくれるのでしょうか。
結果は…
オケが良いのか、指揮者が良いのか、とにかく素晴らしいの一言。
大袈裟な緩急強弱は一切無し。
でも、要所要所でチョットしたアクセントを付けたり、間を置いたり、アルミンクの指揮はなかなか小粋。
名フィルも最初から最後まで適度な緊張感を保ちつつアルミンクに追従。
ブラームスの表現したかったであろう、荒涼感、絶望感、仄かな希望、小さな幸福感がたたみ掛けるように迫ってくる。
いや~、心を揺さぶられるなぁ。
こりゃ、在京オケもウカウカしていられませんねぇ。
追記:
このコンサートの後、怒濤の同窓会。
疲れた…
スウェーデン放送合唱団 ― 2015年10月16日
平成27年10月16日(金)
ペーター・ダイクストラ+東京都交響楽団@サントリーホール
(独唱、合唱)
ソプラノ:クリスティーナ・ハンソン
アルト:クリスティーナ・ハマーストレム
テノール:コニー・ティマンダー
バス:ヨアン・シンクラー
合唱:スウェーデン放送合唱団
リゲティ:ルクス・エテルナ(無伴奏混声合唱)
シェーンベルク:地には平和を(混声合唱と管弦楽)
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モーツァルト:レクイエム(ジュスマイヤー版)
~ アンコール曲 ~
モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス
今日の演目は全て合唱付き。
言い換えると、今日の主役はスウェーデン放送合唱団。
噂には「良い」と聞いたことがあるけど、はたして実際はどうなんでしょう?
今日の演目は、モツレクをメインに演奏順に作曲された年代が遡って行く「温故知新プログラム」。
開演時間になるとスウェーデン放送合唱団の女性陣が下手から上手へ、男性陣が上手から下手へ、クロスするように登場。
最初の曲はリゲティのルクス・エテルナ。
人の歌声がまるで楽器の音のように重なり合い、響き合う幻想的な曲。
あの「2001年宇宙の旅」に使われたらしいけど、記憶にない。
なかなか面白い曲だし、スウェーデン放送合唱団の力量も素晴らしい。
前半二曲目はシェーンベルク。
スウェーデン放送合唱団の皆さん、今までは後列が男性陣、前列が女性陣だったのが、男性陣が上手へ、女性陣が下手に移動。
ん~、段取りまで一つのショーのように見せる(魅せる)とは大したもの。
今日の都響のコンマスは矢部さん。
スウェーデン放送合唱団の歌声を際立たせるようなさり気ない、でもメリハリのはる演奏で彼らを下支え。
歌っている彼らも気持ち良いだろうなぁ。
後半はモツレク。
モーツァルトの最後の、そして未完の名曲。
今日の版はジュスマイヤー版。
一部のモツレクファンから言わせると、ジュスマイヤーはモーツァルトの出来の悪い弟子だったので、この版も稚拙で聴くに値しないらしい。
と言われても、そんなに頻繁にこの曲を聴くことがない自分からすれば、今日の演奏はとても素晴らしく感動的。
約50分の演奏があっという間に終わってしまって物足りないぐらい。
独唱陣のパフォーマンスは言うに及ばず、都響のアンサンブルも素晴らしい。
更に素晴らしいのは、何と言ってもスウェーデン放送合唱団。
美しいだけではなく、芯があり、艶があり、魂がある。
そのパフォーマンスを引き出すことに成功しているダイクストラの力量も、恐らく相当なものに違いない。
今日のコンサート。
思い付きで来てしまったけど、結果は大正解。
モーツァルトの天才たる所以を垣間見ることができてとても価値のある良いコンサートだった。
追記:
指揮者のダイクストラ、いったい身長何センチあるんだろう?
2m?、2m10cm?
チョン・ミョンフンの巨人 ― 2015年10月20日
2015年10月20日(火)
チョン・ミョンフン+東京フィルハーモニー交響楽団@サントリーホール
ヴェルディ:オペラ「ラ・トラヴィアータ」(椿姫)から
天羽 明惠(S)
甲斐 栄次郎(Br)
~ アンコール曲 ~
モーツァルト:オペラ「ドン・ジョヴァンニ」から二重唱「お手をどうぞ」
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マーラー:交響曲第1番「巨人」
日韓国交正常化50周年記念のコンサート。
さぞかし凄まじい人出だろうと覚悟してサントリーホールに来てみたものの、意外や意外、結構空席が目立つ。
指揮者がミョンフン氏でオケが東フィル、演目が巨人なのに何でこんなに空いているんだろう?
前半のヴェルディでは、今一つ指揮者とオケが噛み合っていないように感じられたけど、後半の巨人はバッチリ!
ミョンフン氏のテンポの揺らし方が些か過剰だったけど、東フィルはそのタクトに見事に追従。
いやはやかなりの大熱演でした。
追記:
お姉さんと組んで、プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番でもやってくれないかなぁ~
シベリウスやブルッフも良いなぁ~
ソヒエフ+ベルリン・ドイツ響のベト7 ― 2015年10月30日
2015年10月30日(金)
トゥガン・ソヒエフ+ベルリン・ドイツ交響楽団@東京芸術劇場
シューベルト:劇音楽「ロザムンデ」序曲
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲(Vn:神尾 真由子)
~ アンコール曲 ~
エルンスト:シューベルトの「魔王」による大奇想曲
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ベートーヴェン:交響曲第7番
~ アンコール曲 ~
モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲
前半最初は「ロザムンデ」序曲。
オケが暖まっていないのか、はたまたソヒエフのタクトがそうさせるのか、何となく「もっさり」とした演奏。
まるで、わざとつまらなく演奏させているかのよう。
ん~、大丈夫かソヒエフ?
お次はメンコン。
実は生で神尾さんを聴くのはお初。(確かそのはず)
楽しみ~
しかし、どうもシャキッとしない。
細かいミスを連発するし、「心ここにあらず」なのか気持ちがこもっていない様な気が…
今日の席が2階の末席だから聞こえが悪いせいなのかなぁ?
気を取り直して後半はベト7。
個人的にはベートーヴェンの交響曲の中で一番好きな曲。
前半はイマイチだったからチョット不安。
結果は…
いやはや恐れ入りました。
完璧です。
今まで、幾度となくベト7を聴いてきたけど、間違いなくベスト3に入る名演。
時代もオケも全く違うけど、まるでベームがウィーン・フィルを振っているかのよう。
重厚だけど重々しくはなく、流麗だけど派手派手しさがない王道を行く演奏。
更にアンコールは「フィガロの結婚」序曲。
ん~、素晴らしい、そして楽しい!
個人的には、この「フィガロの結婚」序曲とベト7だけだった方が、今回のコンサートは良かったような気がする。
言い過ぎかなぁ。
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