夏の夜の第九2015年08月29日




2015年8月29日(土)
リチャード・パンチェス+アジアユースオーケストラ@東京オペラシティ

ベートーヴェン:エグモント序曲
ハイドン:チェロ協奏曲第1番
(Vc:スティーブン・イッサーリス)
 ~ アンコール曲 ~
 カザルス:鳥の歌

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ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付き」
(Sop:イー・ソヨン、Mez:ジェニー・ホー、Ten:イ・ヨンフン、Bar:ベンノ・ショルム)
 ~ アンコール曲 ~
 エルガー:エグニマ変奏曲より「ニムロッド」


今年もやってきましたAYO!
PMFも良いけど、こっちも負けず劣らず素晴らしい。
今回のメインは夏に聴く第九。
生まれて初めての体験なので、とても楽しみ。


最初はエグモント序曲。
へ~、音の粒が揃っていると言うべきか、一糸乱れぬ演奏と言うべきか、とにかく精緻。
今年のAYOは去年に増して巧いなぁ~。
メインディッシュの第九が楽しみだ。

お次のハイドン。
始めて聴く曲だけど、敷居が低くて親しみ易い良い曲だなぁ。
ソリストのスティーブン・イッサーリス。
技術が高いのも素晴らしいけど、それにも増してチャーミングなのはその歌心。
彼の演奏は「楽器を弾く」と言うよりまるで「音で語りかけてくる」感じ。
お陰で古典の良さを再認識できた気がする。
また一人、要ウォッチ人物が増えてしまった…


後半は第九。
まだ指揮者がステージ上にいないのに盛大な拍手が湧き起こった。
と、下手から先ほどむせび泣くような「鳥の歌」を披露してくれたイッサーリスがチェロを抱えてやってきた。
そして、チェロセクションの末席に着席。なるほど。

エグモント序曲に比べ、第1楽章こそ演奏の精度・熟度が低かったものの、曲が進むに連れ徐々に深化。
そして、第3楽章は正に「綿々たる叙情の極み」。
今まで聴いてきた「生第3楽章」の中で一番素晴らしい演奏だったじゃないだろうか?

そして最終楽章。
パンチェスの指揮にしっかり食らい付いて精一杯の演奏を続ける若きAYOの面々。
2ndヴァイオリンの出だしが1stに比べて微妙に遅れている気がしないでもないけど、許容範囲。

いよいよクライマックス。
合唱団が立ち上がった。
おやっ?
結構年配の方が多いなぁ。どこの合唱団だろう?
若きAYOと貫禄の合唱団の対比、なかなか面白いな。

ソリストも良い。
オペラシティのオルガンの前に整列し、天上からその美声を披露。
ああ、何だか正月の気分になってきたぞ。

そして終演。
割れんばかりの拍手の文字どおりの大喝采、と言うか奇声。
若い人が多いから仕方ないか…

何回かのカーテンコールの後、パンチェスがマイクを持って指揮台の上に立った。
そして、客席2階正面を示し、ある人物を紹介し始めた。
その人物は福田元総理大臣。
元総理は紹介を受けて立ち上がり、深々と一礼。
あ~、英語が堪能だったら、何故元総理がこの場にいるのか分かるのに悔しいなぁ。

そして、毎年お馴染み「パンチェスの国別メンバー紹介」。
これ、本当に良いんだよな。
中国も台湾も、相手が呼ばれると盛大に拍手。
正に「音楽に国境なし」。

最後に、パンチェスがAYOの日本公演は本日が最終日であること、来週月曜日にはメンバーは解散し、それぞれの古巣にもどることが述べられると、メンバーの中には涙ぐむ者も…
パンチェスがマイクを置き、最後のアンコールが始まった。
曲はエルガーのエグニマ変奏曲より「ニムロッド」。
美しくも哀しいこの名曲。最近のテミルカーノフのアンコールの十八番。

AYOのメンバーの中には目を潤ませながら必死に演奏をする者も…
聴いているこちらも泣けてくる。
ありがとう、AYOの皆さん、そしてパンチェス。
また来年も絶対来てくださいね。

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